Aynuitak Huskokampi Aomarepu アイヌ語古記録データベース Early Records Database of the Ainu Language

蝦夷語箋 第9コマ

国立国語研究所
翻刻済
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愛着あいぢやく
ヘニヤシカへにやしか
呵しかる
カナリヤかなりや
立腹りつふく
セリトイせりとい
高位かうゐ
ブラカハイぶらかはい
様さま
イチいち
〇氣形
牛うし
ボカぼか
馬うむママ、「うむ」は「うま」の誤記か
ゴニごに
犬いぬ
ソワカそわか
㸺うしのるゐ
マロハまろは
媽めうま
コフラこふら
猫ねこ
コシカこしか
巤きりし
キリシきりし
鳫ぐし
グシぐし
鶴つる
シタラヽフリしたらゝふり
白鳥はくちやう
レベテれべて
鴨かも
ラツカらつか
鶏にはとり
雄をん  テトハ てとは雌めん ソリワ そりわ
雀すゞめ
ヲロベをろべ
蚊か
コマリこまり
蚤のみ
フロテふろて

固有名・語句 →

このコマの語彙項目 (21)

見出し語形現代語形典拠
愛着(あいぢやく)ヘニヤシカ へにやしかбѣдняжка 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098095967367287135
語釈・考証

まくぽりの比定:бѣдняжка /bʲɪdʲˈnʲaʂkə/。

投稿の注記: бѣдняжка「気の毒な人」、いたわる呼びかけか

бѣдняжка(бедняжка)「気の毒な人」。愛着は辞書的な直訳より、相手をいたわる呼びかけの働きを示した見出しと考えられる。жはкの前で無声化するのでシカの対応は理解できるが、дの部分が明瞭に写されていない。

呵(しかる)カナリヤ かなりやканалья 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098095967367287135
語釈・考証

まくぽりの比定:каналья /kɐˈnalʲjə/。

投稿の注記: каналья「悪党・ろくでなし」、罵り言葉

каналья「悪党・ろくでなし」。呵という動作の見出しに対し、叱責に使う名詞が記録された例。単純な命令動詞として形態解析する必要はない。

立腹(りつふく)セリトイ せりといсердитый 低まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098095967367287135
語釈・考証

まくぽりの比定:сердитый /sʲɪrˈdʲitɨj/。

投稿の注記: сердитый「怒った」

сердитый「怒った」。/rdʲ/ の子音群と語尾 -тый の一部が縮まった転写を想定する。立腹という状態を形容詞で答えたものと解される。

高位(かうゐ)ブラカハイ ぶらかはい未解釈まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098095967367287135
語釈・考証

まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: плохой /plɐˈxoj/「悪い」

投稿の比較候補は плохой /plɐˈxoj/「悪い」。ブラ・ハイは比較できるが、語中カと母音に不一致があり、高位との意味も合わない。高位に合わせて благой /blɐˈɡoj/「善い」や благородный「高貴な」を補う案にも、音の長さや欠けた部分の問題がある。意味が合う語を期待するだけでは同定を進められず、比定欄は保留する。

様(さま)イチ いち-ичъ 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098095967367287135
語釈・考証

まくぽりの比定:-ичъ /it͡ɕ/。

投稿の注記: 父称の末尾 -ичъ か?敬意呼称を「様」と捉えたか?

父称末尾 -ичъ というまくぽりの仮説。名と父称を組み合わせて敬意を表す慣習を、日本語の様に相当すると捉えた可能性がある。-ич はそれ自体が人名の後に自由に付く「様」という接尾辞ではなく、父称の構成の一部として理解する必要がある。Н. А. Петровский, Словарь русских имён「Об отчествах」

牛(うし)ボカ ぼかбыкъ 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:быкъ /bɨk/。

投稿の注記: быкъ「雄牛」

投稿の比定は быкъ「雄牛」。ボカは属格・有生対格 быка /bɨˈka/ とも比較できる。主格 /bɨk/ に補助母音を付したのか、実際に格変化した語を聞いたのかは確定しない。㸺マロハ=корова と対にして性別の区別を検討できる。

馬(うむ)ゴニ ごにконь 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:конь /konʲ/。

конь「馬」。語末の軟子音 /nʲ/ をニで表すと解される。複数 кони /ˈkonʲɪ/ も仮名に近いが、投稿の主格単数を比定欄に保持し、単複の候補を注記に分ける。

犬(いぬ)ソワカ そわかсобака 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:собака /sɐˈbakə/。

собака「犬」。語中бをワで表しており、ハ行・バ行だけではない唇音の近似が見られる。清濁の符号だけではワとの違いを説明できないため、当時の転写や伝写の問題として残す。

㸺(うしのるゐ)マロハ まろはкорова 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:корова /kɐˈrovə/。

投稿の注記: корова「雌牛」、「カロハ」の誤写か?

корова「雌牛」。まくぽりのカロハという修正案では、マとカの字の混同によって語頭を回復できる。牛ボカ=быкъ と対にすると雄雌の語彙が揃う。本文の㸺という字とその読みは既存の翻刻に従う。

媽(めうま)コフラ こふらкобыла 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:кобыла /kɐˈbɨlə/。

投稿の注記: кобыла「雌馬」

кобыла「雌馬」。フはб、ラはлに対応する。強勢のある /ɨ/ をウ段に近い表記で写したと解する場合、これを無強勢母音の弱化として説明しない。

猫(ねこ)コシカ こしかкошка 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:кошка /ˈkoʂkə/。

кошка「猫」。/ʂk/ の子音連続をシカで近似する。語末のаは無強勢で、カの母音との一致は仮名による近似である。

巤(きりし)キリシ きりしкрысы 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:крысы /ˈkrɨsɨ/。

投稿の注記: крыса「ネズミ」の複数か? cf.『北槎異聞』「鼠 キリス」

крысы「ネズミ」の複数という投稿の候補。語頭 /kr/ の母音挿入と /ɨ/ のイ段表記でキリシを説明できる。日本語見出しの振り仮名きりしがロシア語の転写と同形である点も記録上の特徴。『北槎異聞』の鼠キリスと比較できる。生森將人 1978『北槎異聞』のロシア語

鳫(ぐし)グシ ぐしгусь 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098096518150660357
語釈・考証

まくぽりの比定:гусь /ɡusʲ/。

投稿の注記: гусь「鵞鳥」

гусь「鵞鳥」。/sʲ/ をシで写す。複数 гуси /ˈɡusʲɪ/ も近いが、投稿の単数形を保持する。見出しの振り仮名ぐしがロシア語形と同じである点は、鼠の項目と併せて注目される。

鶴(つる)シタラヽフリ したらゝふり未解釈まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097316825878735
語釈・考証

まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: журавль「鶴」か?前半不明

まくぽりの候補は журавль /ʐʊˈravlʲ/「鶴」。複数 журавли /ʐʊrɐˈvlʲi/ も比較でき、語末フリは /vlʲ/ または /vlʲi/ の近似となり得る。シタラヽの前半と反復記号にはなお説明が必要で、複数形を採るだけで全体が解決するわけではない。

白鳥(はくちやう)レベテ れべてлебедь 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097316825878735
語釈・考証

まくぽりの比定:лебедь /ˈlʲebʲɪtʲ/。

лебедь「白鳥」。語末дは無声化して /tʲ/ となるので、テを清濁の誤りと断定しない。語頭・語中の軟音がそれぞれレ・ベで近似される。

鴨(かも)ラツカ らつかутка 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097316825878735
語釈・考証

まくぽりの比定:утка /ˈutkə/。

投稿の注記: 「ウツカ」の誤写か?

утка「鴨」。まくぽりのウツカという修正案ではラ・ウの混同を想定する。耳ラシ=уши にも同じ文字の比較があり、複数の項目を横断して検討できる。

鶏(にはとり) 雄(をん)テトハ てとはпетухъ 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097316825878735
語釈・考証

まくぽりの比定:петухъ /pʲɪˈtux/。

петухъ「雄鶏」という投稿の比定を保持する。語末ハは属格・有生対格 петуха /pʲɪtʊˈxa/ にも近い。一方、語頭テと /pʲɪ/ の対応は不規則であり、格の分析だけで仮名全体を説明することはできない。

鶏(にはとり) 雌(めん)ソリワ そりわкурица 低まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097316825878735
語釈・考証

まくぽりの比定:курица /ˈkurʲɪt͡sə/。

投稿の注記: 「クリツワ」の誤写か cf.『北槎異聞』「クウリツワ」

курица「雌鶏」。まくぽりはクリツワを想定し、『北槎異聞』のクウリツワを比較する。ソとク、破擦音を含む末尾の文字の乱れを要するため、語の同定と細部の復元の確度を分ける。生森將人 1978『北槎異聞』のロシア語

雀(すゞめ)ヲロベ をろべворобей 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097316825878735
語釈・考証

まくぽりの比定:воробей /vərɐˈbʲej/。

воробей「雀」。語頭вをヲで近似し、語末 /j/ の独立した仮名を欠く。水ボタ・酒ビナなどのバ行と比べても、вの転写が一種類に揃っていないことを示す。

蚊(か)コマリ こまりкомары 中まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097481234239557
語釈・考証

まくぽりの比定:комары /kəmɐˈrɨ/。

投稿の注記: комаръ「蚊」の複数か

комары は комаръ「蚊」の主格複数。まくぽりは複数の候補とする。コマリだけから強勢を確定できないが、語末リは /rɨ/ を近似する形として理解できる。

蚤(のみ)フロテ ふろてблохи 低まくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098097481234239557
語釈・考証

まくぽりの比定:блохи /ˈbloxʲɪ/。

投稿の注記: блоха「蚤」の複数か?「フロヒ」の誤写か?

блохи は блоха「蚤」の主格複数。まくぽりはフロヒの誤写を考える。フロは /bl/ の近似として理解できるが、テと /xʲɪ/ は音対応では説明しにくく、文字の検討が必要である。

翻刻者のメモ

  1. ママ、「うむ」は「うま」の誤記か — ♪ まくぽり ☆彡