Aynuitak Huskokampi Aomarepu アイヌ語古記録データベース Early Records Database of the Ainu Language

蝦夷語箋 Page 7

National Institute for Japanese Language and Linguistics
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National Institute for Japanese Language and Linguistics · Image terms · IIIF manifest

手て
ルキるき
足あし
ノキのき
指ゆび
ヲホシテをほして
爪つめ
ノコキのこき
手ての筋すじ
リニイナラトネりにいならとね
腹はら
ブリヤラハぶりやらは
臍ほそ
フツボふつぼ
陰茎ゐんきやう
ホイほい
陰門ゐんもん
ヒスダひすだ
肛門こうもん
シヨハしよは
懐妊くわいにん
ブロハトイぶろはとい
産さん
ロジツサろじつさ
経水けいすい
カチスカかちすか
大便だいべん
スラチすらち
小便しやうべん
フラチふらち
始通門はじめてましはる
ノヲイテラチコのをいてらちこ
死し
ホコイノほこいの
〇人倫
父ちゝ
バチウシカばちうしか
母はゝ
マトシスラカまとしすらか
祖父ぢゝ
キリコロウきりころう

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GlossFormModern formCitation
手(て)ルキ るきруки mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098074769493278799
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:руки /ˈrukʲɪ/。

投稿の注記: рука「手・腕」の複数

руки は рука「手・腕」の複数。投稿の /ˈrukʲɪ/ は主格複数で、同じ綴りの属格単数 руки /rʊˈkʲi/ とは強勢が異なる。対になる身体部位という意味は複数の解釈を支えるが、仮名には強勢の明示がない。

足(あし)ノキ のきноги mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098074769493278799
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:ноги /ˈnoɡʲɪ/。

投稿の注記: нога「足・脚」の複数

ноги は нога「足・脚」の複数。/ɡʲ/ が無濁点のキに対応する。主格複数 /ˈnoɡʲɪ/ と属格単数 /nɐˈɡʲi/ は同じ綴りでも強勢が違うため、音・文法上の候補を区別する。

指(ゆび)ヲホシテ をほしてuninterpretedまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098074769493278799
Interpretation and discussion

まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: cf. персты、пальцы「指」

まくぽりの比較候補は персты /pʲɪrˈstɨ/ と пальцы /ˈpalʲt͡sɨ/。前者は古風な「指」の複数、後者は通常の複数形である。いずれもヲホシテ全体との規則的な対応は得られていない。

укажите /ʊkɐˈʐɨtʲɪ/「指し示してください」という動作への応答も音の比較案になるが、語中 /k/ とホの不一致が残る。『北槎異聞』の指・各指の名の一覧は語彙比較に使えるものの、本項目の同定を直接与えるものではない。生森 1978, p. 56

爪(つめ)ノコキ のこきногти mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098074769493278799
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まくぽりの比定:ногти /ˈnokʲtʲɪ/。

投稿の注記: ноготь「爪」の複数。「ノコチ」の誤写か?

ногти「爪」の複数。/ɡ/ は /tʲ/ の前で無声化して /k/ となるので、ノコまでの対応は理解できる。後半キをチの文字の混同とみるのがまくぽりの案であり、本例のキをロシア語側の方言音で説明するには、対応する地域・語形の資料を要する。

投稿の /ˈnokʲtʲɪ/ は /k/ まで軟音化した表記で、/ˈnoktʲɪ/ も参考音として比較できる。いずれの表記でも、語末キを説明する問題は残る。

手(て)の筋(すじ)リニイナラトネ りにいならとねлиніи на ладони mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075222444511475
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:линіи на ладони /ˈlʲinʲɪɪ nə lɐˈdonʲɪ/。

投稿の注記: линіи「線」+на ладони「手のひらの上に」

линіи(линии)「線」の複数に、на ладони「手のひらの上に」という前置詞句が続く。位置を表す на は前置格を取り、ладони は ладонь の単数前置格と読める。リニイとナラトネの対応が明瞭で、単語の列だけでなく短い句が採録されたことを示す。

腹(はら)ブリヤラハ ぶりやらはбрюхо mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075222444511475
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まくぽりの比定:брюхо /ˈbrʲuxə/。

投稿の注記: Невский (1936:44) は ブリヤウハ buriyauha とする

брюхо「腹」。Невский(1936:44)の buriyaraha → buriyauha は、ラをウと読む修正案に対応する。同じ頁で六月のフを含む綴りも扱うが、二つの誤りが同じ伝写段階に生じたことまでを示すわけではない。Невский 1936, p. 44

臍(ほそ)フツボ ふつぼпупъ mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075222444511475
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まくぽりの比定:пупъ /pup/。

投稿の注記: пупъ「へそ」か?cf. пупокъ

пупъ「へそ」という投稿の比定を採る。フツボの促音的な部分と末尾ボは、単音節 /pup/ を近似した可能性がある。指小形 пупокъ /pʊˈpok/ も意味は合うが、末尾 /k/ が記録に対応しにくい。

陰茎(ゐんきやう)ホイ ほいхуй mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075222444511475
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まくぽりの比定:хуй /xuj/。

投稿の注記: хуй「陰茎」

хуй「陰茎」。ロシア語では卑語に属する。語頭 /x/ をホ、末尾 /j/ をイで記した形に対応する。日本語見出しの語調と、採録されたロシア語の社会的な語調は一致しない。

陰門(ゐんもん)ヒスダ ひすだпизда mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075222444511475
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まくぽりの比定:пизда /pʲɪzˈda/。

投稿の注記: пизда「女性器」

пизда「女性器」。ロシア語では卑語。/pʲ/ のヒ、/z/ のスは清濁の揺れる転写として理解できる。語の意味を説明する際にも、解剖学的な中立名称とは語調が異なることを残す。

肛門(こうもん)シヨハ しよはжопа mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075222444511475
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まくぽりの比定:жопа /ˈʐopə/。

投稿の注記: жопа「尻・肛門」

жопа「尻・肛門」。卑俗な身体語で、シヨは /ʐo/、ハは /p/ に対応する。現代の中立的な解剖学用語を、そのまま原記録の語調として扱わない。

懐妊(くわいにん)ブロハトイ ぶろはといбрюхатый mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075442909692146
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まくぽりの比定:брюхатый /brʲʊˈxatɨj/。

брюхатый は腹の大きいことを表す形容詞で、妊娠を指す用法もある。投稿の形は男性形。女性を修飾するなら брюхатая となるため、見出し懐妊から完全な女性主語の文を復元することはできない。語の提示形を記録した可能性がある。

産(さん)ロジツサ ろじつさродиться mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075442909692146
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まくぽりの比定:родиться /rɐˈdʲit͡sːə/。

投稿の注記: родиться「生まれる」

родиться は「生まれる」という不定詞。日本語の産むという他動的な読みとは参与者の向きが違う。語末 -ться /t͡sːə/ とツサの対応は、陰奔の末尾をロシア語の再帰形と比較する際の内部資料になる。

経水(けいすい)カチスカ かちすかочистка lowまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098075442909692146
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:очистка /ɐˈt͡ɕistkə/。

投稿の注記: очистка「清め」か? Даль に очищенье「月経」の語義

очистка「清掃・除去・清め」という投稿の候補を残す。очищенье/очищение に月経の語義があるというДальの比較は、同じ語族の意味の広がりを示す。очистка そのものに同じ語義を確認したこととは分ける。

カチスカには語頭оとの不一致、子音群 /stk/ の縮約が残る。語頭のカを指示語などと切り分ける案も、後続形との文法的一致が確かめられるまでは復元句に採らない。

大便(だいべん)スラチ すらちсрать mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098080586472800548
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まくぽりの比定:срать /sratʲ/。

срать「大便をする」という不定詞。ロシア語では卑語。語末の軟音 /tʲ/ にチが対応する。隣の小便フラチを同じ語の誤写とする必要があるかどうかは、小便の方言語彙も調べて判断する。

小便(しやうべん)フラチ ふらちфурить mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098080586472800548
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まくぽりの比定:фурить /ˈfurʲɪtʲ/。

投稿の注記: фурить「小便をする」という方言がある cf. ссать「小便をする」

まくぽりの比定は方言 фу́рить「小便をする」。Фасмер はこの語義を含む第2項に、ヴャトカ・プスコフ・トヴェリの資料を挙げる。標準語の ссать /sːatʲ/ では説明しにくいラに /rʲ/ が対応する利点がある。

ただしフラチのアと /ɪ/ は一致しないので、同定の確度と母音の問題を分けて示す。関連語 фурать に同じ語義があると自動的に扱わない。後代のシベリア資料に似た語があっても、それだけでは1854年の話者の方言を確定できない。Фасмер「фурить II」

始通門(はじめてましはる)ノヲイテラチコ のをいてらちこuninterpretedまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098080586472800548
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まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: новой「新しい」指小辞 -чка

まくぽりは новой「新しい」と指小辞 -чка を手がかりにする。標準語の новый /ˈnovɨj/ と活用形 новой /ˈnovəj/ は比較候補になるが、仮名だけでは強勢や性・格を確定できない。

後半テラチコの名詞は未同定で、-чка に似た語末だけから特定の指小形を選ぶことはできない。始通門という見出しの意味に合わせた句の補完には、同時代の用例と語全体の音対応が必要である。

陰奔(いろごと)コトカスタレナネモシノシノタ ▲タテシサツサ uninterpretedまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098084325053092029
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まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: неможно「できない」? тѣшиться「遊ぶ」? стар-「老いた」?

まくぽりが挙げる неможно、тѣшиться、стар- を比較の出発点とする。неможно /nʲɪˈmoʐnə/ は古風な「できない・不可能だ」で、ネモシノへの対応が比較的よい。тѣшиться(тешиться)/ˈtʲeʂɨt͡sːə/ は楽しむ・遊ぶという再帰動詞。これだけで性的な行為を指す定型句の存在を証明することはできない。Грамота.ру「неможно」 Грамота.ру「тешиться」

スタレナには стар-「老いた」を含む語形が候補となる。終わりのタテシサツサには -ться/-тся を比較でき、産ロジツサ=родиться が内部の対応例になる。когда /kɐɡˈda/ をコトカに当てるには子音の順序の問題があり、清濁の揺れだけでは説明できない。

シノタには женатъ /ʐɨˈnat/「既婚の」、または女性を含む句の一部を比較できる。женатъ は末尾тを説明する一方、強勢のあるаとノの不一致が残る。с женой と読む案も末尾タの説明が必要。シノの重複を誤写として削る根拠は未確認である。二段のコトカスタレナネモシノシノタ/タテシサツサを全文として保ち、連続したロシア語文の復元・翻訳は確定しない。

死(し)ホコイノ ほこいのпокойный mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098084896887718146
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まくぽりの比定:покойный /pɐˈkojnɨj/。

投稿の注記: покойный「亡くなった」

покойный「亡くなった・故人の」。名詞死や動詞死ぬに対し、死亡した人を形容する語が採録されたと解される。語尾ノは形容詞の -ный の不完全な転写と考えられる。

父(ちゝ)バチウシカ ばちうしかбатюшка mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098088611384287415
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まくぽりの比定:батюшка /ˈbatʲʊʂkə/。

батюшка は父への親愛的な呼び方。目上の男性や聖職者への呼びかけにも用いるが、父という見出しでは父親の語義が自然である。チウシカは軟音 /tʲ/ と /ʂk/ を含む連続を近似する。生森將人 1978『北槎異聞』のロシア語 岩井 2020, p. 171「父」

母(はゝ)マトシスラカ まとしすらかuninterpretedまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098088611384287415
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まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: матушка「お母さん」か?「スラ」は不明 cf.『北槎異聞』「母 マチユシユカ」 cf.『北槎聞略』「母 マチュシカ」 cf. 方言 матушенька

まくぽりは матушка /ˈmatʊʂkə/ を候補とし、スラが余ることを指摘する。父батюшкаとの対は母の愛称を考える理由になるが、仮名のすべてが一致するわけではない。比較の『北槎異聞』マチユシユカ、『北槎聞略』マチュシカにもスラに相当する部分はない。生森將人 1978『北槎異聞』のロシア語 岩井 2020, p. 187「母」

方言 ма́тушенька /ˈmatʊʂɨnʲkə/ は実在する親愛形で、СРНГ 18:39 にヴォログダの1898年資料などが載る。ただし -шенька とシスラカの対応はなお不完全。同じ項目の別強勢 мату́шенька は雌牛への愛称なので、母の語義の裏づけに混ぜない。СРНГ 18, p. 39「Матушенька」

祖父(ぢゝ)キリコロウ きりころうuninterpretedまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098088611384287415
Interpretation and discussion

まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: cf. дѣдъ、дѣдушка「祖父」

まくぽりは同定を保留し、дѣдъ /dʲet/ と дѣдушка /ˈdʲedʊʂkə/ を比較する。いずれも意味は祖父に合うがキリコロウとの音対応は遠い。Григорий /ɡrʲɪˈɡorʲɪj/ のような人名に近い部分があっても、祖父がそう呼ばれていたという採録事情を示す資料がない限り、固有名による解決は推測にとどまる。