Aynuitak Huskokampi Aomarepu アイヌ語古記録データベース Early Records Database of the Ainu Language

蝦夷語箋 Page 4

National Institute for Japanese Language and Linguistics
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National Institute for Japanese Language and Linguistics · Image terms · IIIF manifest

五月
マイまい
六月
コフニこふに
七月
イフリいふり
八月
アヲスあをす
九月
センヲマフリせんをまふり
十月
ヲキナヤフリをきなやふり
十一月
ノマフリのまふり
十二月
ゼカフリぜかふり
道みち
トウロガとうろが
家いへ
シトジヨノしとじよの
井戸ゐど
コロセツころせつ
橋はし
モラスもらす
土蔵どざう
アンハルあんはる
大船おほぶね
カラビからび
浴室ゆぶろ
バンヤばんや
入湯にうとう
バリヤばりや
佛像ぶつざう
ホシフほしふ
〇服食
着類きるい
フラナふらな
夏衣なつごろも
レツイイれついゝ
冬衣ふゆごろも
シミノイしみのい

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GlossFormModern formCitation
五月マイ まいмай mediumまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:май /maj/。

май /maj/「五月」。音・意味ともによく一致する。イは独立したロシア語の音節を表すものではなく、語末の半母音 /j/ に対応する。

六月コフニ こふにіюнь lowまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:іюнь /iˈjunʲ/。

投稿の注記: Невский (1936:44) は ユフニ yufuni → yūni とする

іюнь(июнь)/ɪˈjunʲ/「六月」。まくぽりはНевский(1936:44)の kofuni → yufuni(読み yūni)という修正を紹介する。コとユの文字の混同を想定する訂正案である。

フを現代ロシア語の /f/ と解すると語形に合わない。歴史的な仮名の母音表記として七月イフリと比較できる。Невский の修正を別本の外交的翻刻とみなさず、原文のコフニを残す。

Невский 1936, p. 44。

七月イフリ いふりіюль mediumまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:іюль /iˈjulʲ/。

іюль(июль)/ɪˈjulʲ/「七月」。まくぽりは ifuri → yūri と読む。六月コフニの訂正案ユフニと対になり、末尾ニとリがそれぞれ軟音 /nʲ/ と /lʲ/ に対応する。フはこのロシア語に独立した /f/ があることを示さない。

八月アヲス あをすавгустъ lowまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
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まくぽりの比定:августъ /ˈavɡʊst/。

投稿の注記: cf.『北槎異聞』「アウス」 アグス agusu か?

августъ(август)/ˈavɡʊst/「八月」。まくぽりは『北槎異聞』のアウスを比較し、アグスという訂正の可能性も挙げる。子音群 /vɡ/ と語末 /st/ が大きく縮まった転写として理解できる。

比較資料にも短縮形があるため、アヲスの短さだけから『蝦夷語箋』の版刻の誤りと断定しない。ヲの文字形の問題と、採録された音の省略とは別に検討する必要がある。

生森將人 1978『北槎異聞』のロシア語。

九月センヲマフリ せんをまふりсентябрь lowまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:сентябрь /sʲenʲˈtʲabrʲ/。

投稿の注記: センチヤブリ sentyaburi か

сентябрь /sʲɪnʲˈtʲabrʲ/「九月」。まくぽりはセンチヤブリを想定する。センと語末フリ、月名の配列が比定を支えるが、ヲマと /tʲa/ の対応は不規則。

仮名の訂正案は月名全体から遡って得た読みであり、ヲ→チ、マ→ヤを本附録全体に自動適用できる規則とはしない。

十月ヲキナヤフリ をきなやふりоктябрь lowまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:октябрь /ɐkˈtʲabrʲ/。

投稿の注記: ヲキチヤブリ okityaburi か

октябрь /ɐkˈtʲabrʲ/「十月」。まくぽりはヲキチヤブリを想定する。語頭 /ɐk/ と末尾 /brʲ/ に対応する部分があり、九月・十一月と並ぶ月名の列も同定を支える。語中ナは /tʲ/ に規則的に対応するとは考えにくく、チとの文字の混同が候補になる。

十一月ノマフリ のまふりноябрь lowまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:ноябрь /nɐˈjabrʲ/。

投稿の注記: ノヤブリ noyaburi か

ноябрь /nɐˈjabrʲ/「十一月」。まくぽりはノヤブリを想定する。マとヤ、清濁を区別しないフとブの問題を分ける必要がある。ノマフリという記録形を残し、推定したノヤブリを未確認の原形として扱う。

十二月ゼカフリ ぜかふりдекабрь mediumまくぽり, X, 2026-09-08, https://x.com/mkpoli/status/2097324828286189743
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:декабрь /dʲeˈkabrʲ/。

投稿の注記: ゼカブリ zyekaburi か

декабрь /dʲɪˈkabrʲ/「十二月」。まくぽりはゼカブリを想定する。ゼは軟子音дの聞き取り、フはбの無濁点表記、リは軟音рの近似として理解できる。九月から十二月に繰り返される語末フリの対応は、各項目を相互に比較する根拠になる。

道(みち)トウロガ とうろがдорога mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098017876884271264
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:дорога /dɐˈroɡə/。

дорога「道」。/d/ を清音ト、/r/ をラ行で近似する。トウのウをロシア語の独立した長母音とみなす根拠はなく、仮名の綴りと比定語の音節を区別する。生森(1978:52)の『北槎異聞』では通に дорога が対応する。生森 1978, p. 52

家(いへ)シトジヨノ しとじよのстудёно highまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098017876884271264
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:студёно /stuˈdʲono/。

投稿の注記: 前述の「寒(かん)」と入れ替わっている

студёно /stʊˈdʲɵnə/ は寒さを述べる語で、家の意味を持たない。まくぽりが示した寒イツバ=изба との交換によって、双方の和訳を説明できる。ジョに近いジヨは軟子音 /dʲ/ と後続母音の近似と考えられる。

比較資料には『北槎異聞』の家イスバドマ(изба-дом)と、『北槎聞略』の寒に対応するシトヂャノがある。交換を認めても、その成立段階や、各資料間の直接の依存関係までは確定しない。生森 1978, p. 56 岩井 2020, p. 142「寒」

寒・家の入れ替えを示した投稿:まくぽり 2026-09-10、寒と家の入れ替え。

井戸(ゐど)コロセツ ころせつколодецъ mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098018973535424684
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:колодецъ /kɐˈlodʲɪt͡s/。

投稿の注記: де /dʲe/ = ゼ zye cf.『北槎異聞』「井 コロシツ」

колодецъ の軟音 /dʲ/ をセ、語末 /t͡s/ をツで近似したものと解する。まくぽりの比較は井コロシツである。生森(1978:52)の対照表の活字はコロジツなので、引用する翻刻による清濁の差を残す。生森 1978, p. 52

橋(はし)モラス もらすмостъ lowまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098018973535424684
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:мостъ /most/。

投稿の注記: cf.『北槎異聞』「橋 モスト」 「モフス」「モウス」「モステ」の誤写か?

мостъ「橋」は見出しに一致するが、ラと語末 /st/ の対応が難しい。投稿にあるモフス・モウス・モステは、確認済みの異本の読みとしては扱わない。морозъ /mɐˈros/「厳寒・霜」は音の比較対象になるものの、寒・家の交換に橋を加えても мостъ に当たる語が得られず、三項目の循環的な交換は成立しない。

土蔵(どざう)アンハル あんはるамбаръ mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098021974169809148
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:амбаръ /ɐmˈbar/。

投稿の注記: 穀物などをしまう倉。

амбаръ「穀倉・倉庫」。/b/ をハで表し、語末 /r/ にルを当てる。土蔵は日本側の建物分類による見出しなので、ロシア側の倉が土壁造りだったことまでは示さない。『北槎異聞』の倉バンバラは前置詞を含む в амбар と対照される。生森 1978, p. 56

大船(おほぶね)カラビ からびкорабль mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098021974169809148
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:корабль /kɐˈrablʲ/。

корабль は船を表す名詞。語末の子音連続 /blʲ/ をビに圧縮して写した形と考えられる。大船という日本語見出しには対応するが、船種の詳細をこの語だけから決めることはできない。

浴室(ゆぶろ)バンヤ ばんやбаня mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098021974169809148
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:баня /ˈbanʲə/。

баня は浴場・蒸し風呂を指す。辞書には、その施設で体を洗う行為を表す用法も載るため、隣の入湯バリヤを同じ語とみる意味上の条件はある。/nʲ/ をンヤで近似する。Грамота.ру 所収辞書「баня」

入湯(にうとう)バリヤ ばりやuninterpretedまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098021974169809148
Interpretation and discussion

まくぽりは比定を保留している。

投稿の注記: 同じ баня「浴室・入浴」か?па́рить「蒸す」か

まくぽりは баня /ˈbanʲə/ と па́рить /ˈparʲɪtʲ/ を比較し、語形の同定を保留する。баня には入浴行為の意味もあり、浴室バンヤとの重複自体は成立する。記録されたバンヤからバリヤならン・リの一字の差で、バニヤを中間形に立てる必要はない。

па́ря /ˈparʲə/ は парить の副動詞で「蒸しながら」、па́рю /ˈparʲʊ/ は一人称単数形。前者は音が近いが、入湯という見出しにこの形だけが採られた理由を要する。『北槎聞略』の湯浴にはバニヤパレツという複合的な記録もあり、浴場名と入浴動作を併せて答える可能性を考える材料になる。Грамота.ру 所収辞書「баня」 岩井 2020, p. 171「湯浴」

佛像(ぶつざう)ホシフ ほしふбогъ lowまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098044382415049003
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:богъ /box/。

投稿の注記: 「ホーフ」の誤写か?cf.『北槎聞略』「佛 ボーフ」

まくぽりは богъ /box/「神」と比定し、シを長音符の読み違いとするホーフの復元を提案する。『北槎聞略』の佛ボーフが比較材料となる。語末гの無声化した発音がこの語では /x/ となり、フで近似されるため、末尾を /f/ と解する必要はない。

日本側の佛という見出しは宗教上の対応づけで、仏教の仏像そのものを指すロシア語とは限らない。бож- 系を立てなくても、長音符の問題としてシを説明できるというのが投稿の要点である。岩井 2020, p. 181「佛」

着類(きるい)フラナ ふらなплатье lowまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098044382415049003
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:платье /ˈplatʲje/。

投稿の注記: платье「ドレス」古くは「衣服一般」 「フラチ」の誤写か?

платье は衣服一般を指す語義を持つ。語頭 /pl/ はフラで近似できるが、ナと /tʲje/ の対応は残る。まくぽりのフラチという修正案を記録し、複数・属格の платья /ˈplatʲjə/ も比較対象とする。日本語側の末尾母音だけで単複や格は確定できない。

夏衣(なつごろも)レツイイ れついゝлѣтній mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098044382415049003
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:лѣтній /ˈlʲetʲnʲɪj/。

投稿の注記: лѣтній「夏の」、лѣтнее платье「夏の服」か

лѣтній は男性単数の形容詞「夏の」。платье に一致させるなら中性の лѣтнее になる。したがって、夏衣を完全な句 лѣтнее платье と復元する案と、記録に近い形容詞 лѣтній を同定する作業は分ける。名詞の省略という考えは有力だが、省略された名詞自体は未確認。

冬衣(ふゆごろも)シミノイ しみのいзимній mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098044382415049003
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:зимній /ˈzʲimnʲɪj/。

投稿の注記: зимній「冬の」、зимнее платье「冬の服」か

зимній は男性単数の形容詞「冬の」。中性名詞 платье に伴う形は зимнее となる。記録末尾ノイには зимней /ˈzʲimnʲɪj/ のような屈折形や文字の混乱も比較でき、仮名だけから文法的な性・格を一つに決めない。