Aynuitak Huskokampi Aomarepu アイヌ語古記録データベース Early Records Database of the Ainu Language

蝦夷語箋 Page 6

National Institute for Japanese Language and Linguistics
Transcribed
Facsimile

National Institute for Japanese Language and Linguistics · Image terms · IIIF manifest

匙さじ
ロシカろしか
椀わん
シヤシンしやしん
煙管きせる
カンザかんざ
筆ふで
ベラべら
墨すみ
チリニちりに
紙かみ
ブマシカぶましか
十露盤そろばん
シテラトしてらと
笠かさ
シラハしらは
雪踏せつた
ハシマコはしまこ
〇肢體
容貌やうばう
リツヲりつを
頭かしら
ゴロハごろは
首くび
セヤせや
鼻はな
ノヲスイのをすい
口くち
ゴロトごろと
耳みゝ
ラシらし
眼め
ギラザぎらざ
歯は
ズビずび
舌した
マジキまじき
齶はぐき
ゾビぞび
眉まゆ
ボロビぼろび
髪かみ
ゴロスイごろすい

Names & terms →

Wordlist items on this page (21)

GlossFormModern formCitation
匙(さじ)ロシカ ろしかложка mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070046455234574
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:ложка /ˈloʂkə/。

ложка「匙」。綴りのжは後続の無声кの前で無声化し /ʂ/ となるので、シを直ちに清濁の誤記とする必要はない。

椀(わん)シヤシン しやしんчаши mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070046455234574
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:чаши /ˈt͡ɕaʂɨ/。

чаши は чаша「杯・鉢」の主格複数、または属格単数として同じ綴りを取る。投稿では /ˈt͡ɕaʂɨ/ と比定する。末尾ンはこの語形に対応する音がなく、чашка /ˈt͡ɕaʂkə/「カップ」と比較してもンを説明するには文字の問題が残る。

煙管(きせる)カンザ かんざганза mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070046455234574
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:ганза /ɡɐnˈza/。

投稿の注記: ганза「煙管」。シベリアの語

ганза「煙管」はアニキンの語源辞典で確認できる。гамза́ III の項は、シベリア各地の異形と1700・1705・1743年の記録を挙げ、中国語 gangtzi(гǎньцзы)を起点として、シベリアの諸言語を介した伝播を論じる。単に現代の辞書から類音語を探した例より、採録地域・時代を検討できる材料が多い。

語源の経路には直接・間接の伝播があり、本附録の形だけで中国語・モンゴル語などのどれを直接の供与言語とするかは決められない。Аникин 2016, Русский этимологический словарь 10, p. 55, гамза III

筆(ふで)ベラ べらперо mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070207361351861
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:перо /pʲɪˈro/。

投稿の注記: перо「羽根ペン」

перо「羽根・羽根ペン」。筆という見出しに対して筆記具としての語義を採る。主格の語末оは強勢を持つので、ラを弱化母音の一例と断定せず、属格 пера /pʲɪˈra/ も比較する。

墨(すみ)チリニ ちりにчернила lowまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070207361351861
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:чернила /t͡ɕɪrˈnʲilə/。

投稿の注記: чернила「インク」

чернила はインクを表す複数形専用名詞。末尾の -ла が記録されていないとすると、チリニは語の一部を写した形になる。語末脱落か文字の問題かは未確定である。

紙(かみ)ブマシカ ぶましかбумажка mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070207361351861
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:бумажка /bʊˈmaʂkə/。

投稿の注記: бумажка「紙片」、бумага「紙」の指小形

бумажка は бумага の指小形。語中жはкの前で無声化して /ʂ/ となり、シカとの対応がよい。単なる紙の名詞に加えて、紙片や一枚の紙を示す用法を考えられる。

十露盤(そろばん)シテラト してらとсчёты lowまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070722048676027
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:счёты /ɕːɪˈtatʲ/。

投稿の注記: 「シチフト」の誤写か?считать「数える」か?

投稿の見出し形は счёты「そろばん」で、記された IPA /ɕːɪˈtatʲ/ は同じ注記にある считать「数える」の発音に相当する。счёты の参考発音は /ˈɕːɵtɨ/。語の同定欄には投稿の счёты を残し、この二つを注記で区別する。

シテラトは считать、または命令形 считай /ɕːɪˈtaj/ とも比較し得るが、ラが未説明である。そろばんを見て数える動作を答えた可能性と、シチフトなどの文字の乱れを考える案を分ける。

笠(かさ)シラハ しらはшляпа mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070722048676027
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:шляпа /ˈʂlʲapə/。

投稿の注記: шляпа「帽子」

шляпа「帽子」。語頭 /ʂlʲ/ をシラ、/p/ をハで表した形と考えられる。笠は頭を覆う道具としての和訳で、形や材質まで一致する必要はない。

雪踏(せつた)ハシマコ はしまこбашмакъ mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098070722048676027
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:башмакъ /bɐʂˈmak/。

投稿の注記: башмакъ「靴」

башмакъ「靴」。語頭бは無濁点のハ、語中 /ʂm/ はシマに対応する。雪踏という見出しは履物の機能による対応である。

容貌(やうばう)リツヲ りつをлицо mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098071033815425266
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:лицо /lʲɪˈt͡so/。

投稿の注記: лицо「顔」

лицо「顔」。語末 /t͡so/ にツヲを当てた形と解される。容貌という日本語には顔つき・外見という意味もあり、ロシア語名詞との対応が理解できる。

頭(かしら)ゴロハ ごろはголова mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098071033815425266
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:голова /ɡəlɐˈva/。

голова「頭」。無強勢оの母音がオ段、вがハ行で記される。ゴロハから各母音の当時の音価を一律に /o/ と復元することはできない。

首(くび)セヤ せやшея mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098071033815425266
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:шея /ˈʂejə/。

шея「首」。硬い /ʂ/ と /e/ をセで近似し、後続の /jə/ をヤで写した形と解される。身体部位の並びも比定を支える。

鼻(はな)ノヲスイ のをすいносъ mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098071033815425266
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:носъ /nos/。

投稿の注記: 複数 носы /nɐˈsɨ/ か

主たる比定は носъ「鼻」。末尾スイには複数 носы /nɐˈsɨ/ が比較できる。ただし主格単数に転写上の母音が付いた可能性もあり、仮名だけから複数と断定しない。生森 1978, p. 56

口(くち)ゴロト ごろとглотъ mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072232643977454
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:глотъ /ɡlot/。

投稿の注記: 方言 глотъ「喉」か?СРНГ 6:201 cf. горло「喉」、ротъ「口」

まくぽりの比定は方言 глотъ「喉」。СРНГ 6:201、第1項 глот の第1義は喉・咽喉で、Даль、コストロマなどの資料を挙げる。語末 /t/ がトと直接対応する点が горло より明瞭である。

ただし和訳口と喉の意味のずれは残る。ротъ /rot/「口」なら意味は合うがゴロの部分が説明しにくい。глот の別義にある大食漢などを、本項目の意味に混ぜない。СРНГ 6, p. 201, 1. Глот, sense 1

耳(みゝ)ラシ らしуши mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072232643977454
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:уши /ˈuʂɨ/。

投稿の注記: ухо「耳」の複数。「ウシ」の誤写か?

уши「耳」の複数形に対して、まくぽりはラをウの誤写とみる。『北槎異聞』の耳ウシは音の比較材料になる。ушная раковина「耳殻」の ра́ковина /ˈrakəvʲɪnə/ をラから探しても、後半シだけでは語全体との対応が得られない。生森 1978, p. 56

眼(め)ギラザ ぎらざглаза mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072232643977454
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:глаза /ɡlɐˈza/。

投稿の注記: глазъ「目」の複数

глаза は глазъ「目」の主格複数。子音連続 /ɡl/ に母音を補ったギラが対応する。身体の対になった部分が複数で記録される点で、耳・手・足の項目と比較できる。

歯(は)ズビ ずびзубы mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072548777116027
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:зубы /ˈzubɨ/。

投稿の注記: зубъ「歯」の複数

зубы は зубъ「歯」の複数。/ɨ/ をイ段で近似する。齶ゾビも同じ語と比定されるため、記録した身体部位の範囲や日本語見出しの区別が採録時に一致していなかった可能性がある。

舌(した)マジキ まじきязыкъ mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072548777116027
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:языкъ /jɪˈzɨk/。

投稿の注記: Невский (1936:44) は「ヤジキ」yajiki とする

языкъ「舌」。Невский(1936:44)は majiki に対して yajiki を提案する。まくぽりのヤジキはこの修正に対応する。マとヤの混同を想定すれば語頭を説明できるが、原文のマジキ自体は変更しない。Невский 1936, p. 44

齶(はぐき)ゾビ ぞびзубы mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072548777116027
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:зубы /ˈzubɨ/。

投稿の注記: зубы「歯」。「歯」と同じ

зубы「歯」の複数という比定を保持する。齶という見出しの読みは、翻刻にあるはぐきに従う。歯ズビとの重複は存在するが、同じ語の重複だけでは別項目との入れ替えを証明できない。

眉(まゆ)ボロビ ぼろびброви mediumまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072990437245144
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:брови /ˈbrovʲɪ/。

投稿の注記: бровь「眉」の複数

брови「眉」の主格複数、または単数の斜格に一致する。まくぽりは複数と読む。/br/ に母音を挿入したボロと、軟音 /vʲ/ をビで表した部分が対応する。

髪(かみ)ゴロスイ ごろすいволосы lowまくぽり, X, 2026-09-10, https://x.com/mkpoli/status/2098072990437245144
Interpretation and discussion

まくぽりの比定:волосы /ˈvoləsɨ/。

投稿の注記: волосъ「毛」の複数 語頭の「ゴ」は不明、聞き間違いか方言か

волосы「髪・毛」の複数。まくぽりが指摘する語頭ゴとвの不一致を残す。単なる清濁の交替では /v/→/ɡ/ を説明できず、聞き取り・伝写・文字の混同を検討する必要がある。『北槎異聞』の髪の転写も比較できるが、本附録のゴを説明する独立の方言資料は未確認。生森 1978, p. 56