山林に仕掛けて獣を捕る弓の罠。『蝦夷島奇観』は獲物の大きさに応じて矢の高さを調整すると説明する。手に持って射る弓と用途が異なる。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(2件)
- 北海道大学附属図書館 · 19コマ・1行 · アマクワ
…正公朝みちのくのえぞかちしまの鷲の羽に妙なるのりの文字もありけりアマクワ図山林曠野の中に弩のことくなる弓を掛置諸獣を躰(イ)獲る其獣の大小によりて矢の高さを手束にはかり…
- 北海道大学附属図書館 · 19コマ・11行 · アマクワ
…毒矢発出す其矢獣に当ればたち処に斃るアマは置事をいふクワは弓なりアマクワかけ置処には必木に木幣を立て人の当らざるしるしとす斆曰膃肭臍多_二偽者_一海中有獣号曰水鳥竜海人…
イチイを指す箱館近在の呼称。『蝦夷島奇観』はヲコノ木を弓材とし、一位・あらら木とも呼ぶと説明する。同じ箇所にアイヌ語名ラルマ二を併記する。ヲコは、村上啓司がオンコの関連形として論じるオッコとの比較候補。
箱館近在の呼称として、本文に併記された「夷名」ラルマ二との関係から日本語の地域名に暫定分類する。ヲコとオッコ・オンコの語形の対応や、その語源は不明。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 9コマ・32行 · ヲコノ木
…きまをはかりてゐるといへり附子矢といふは是也夷名ラルマ二筥館近在ヲコノ木といへり弓材也飛騨国迄は一位の木といふ笏に製す一曰あらゝ木アヨツペ夷鎧の名なり按るに危き器と云訓…
『蝦夷島奇観』が膃肭(オットセイ類)の雌の名として記す語形。ウネヲの説明に続き、大きさを三、四尺余とする。性別による呼称を示す記録だが、現代の種分類との対応は不明。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 21コマ・6行 · ホマツプ
…舟を清浄め木幣神酒を製して海神舟神を祭る膃肭方名ウネヲといふ雌をホマツプといふ大サ三四尺余亦一種ヲヽネツプといふ品あり大サ五尺計より六七尺二種ともに牙ありて上は支歯也波…
本文の表記 ヲヽネツプ · ヲヽネツブ
『蝦夷島奇観』でウネヲに続けて挙げられる大型の海獣の名称。五尺から六、七尺ほどで牙があるとする。『蝦夷島奇観』の「一種」は近代動物分類の種を意味するとは限らない。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(2件)
- 北海道大学附属図書館 · 21コマ・6行 · ヲヽネツプ
…神を祭る膃肭方名ウネヲといふ雌をホマツプといふ大サ三四尺余亦一種ヲヽネツプといふ品あり大サ五尺計より六七尺二種ともに牙ありて上は支歯也波に浮たる状図のことし西地ヲコシリに…
- 北海道大学附属図書館 · 26コマ・1行 · ヲヽネツブ
…りせされば獲かたしとなむとりゑて会所に出せは米衣服烟草をあたふるヲヽネツブ図海狗腎鹹大熱無毒斆曰用酒浸一日紙裹炙香剉搗或於銀器中以酒肉熟合薬時珍曰以 椒樟脳同収則不懐治男…
『蝦夷島奇観』が膃肭に対応させる地方名。雌をホマツプと呼ぶ説明や、牙・波に浮く姿についての記事が続く。オットセイ類に関わる歴史的な名称。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(2件)
- 北海道大学附属図書館 · 21コマ・5行 · ウネヲ
…着くさ〳〵なして舟を清浄め木幣神酒を製して海神舟神を祭る膃肭方名ウネヲといふ雌をホマツプといふ大サ三四尺余亦一種ヲヽネツプといふ品あり大サ五尺計より六七尺二種ともに牙…
- 北海道大学附属図書館 · 21コマ・11行 · ウネヲ
…て漁事に出るあとて物音を禁し家の婦女等食事さへひそかにせされは彼ウネヲもの驚して眼をさますとぞ捕獲て帰れば窓より入るゝ其外漁事具出し入までもかく窓よりせされば獲かたし…
『蝦夷島奇観』に写生される蔓草。葉・花・実を蘿摩に比較し、根の利用や馬の病に用いたという説を紹介する。生馬に由来するという説明は地域の伝承として記録されている。比較語:ikema(イケマ)。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(2件)
- 北海道大学附属図書館 · 27コマ・1行 · イケマ
…曰以 椒樟脳同収則不懐治男子 病気塊積冷労気腎精衰損多色成労瘦粋イケマ図蔓草なり蘿摩の同類別種花実葉蔓相似たり実は三稜にして三四実ツヽ房をなす蘿摩より綿少し根図の如し…
- 北海道大学附属図書館 · 27コマ・10行 · イケマ
…をとむること神功松前辺の土俗伝へて言馬の病に用ひて効ある故生馬(イケマ)の名ありとタビドンベコルベ蟹の名なり渓澗微流に多産す水中へ味噌を投すれは石間より群し出て是を喰…
『蝦夷島奇観』が渓流にいる蟹の名とする語形。味噌を水へ入れて集まったものを捕る方法や、焼いて食べる利用を記す。記述だけで現代の蟹の種まで確定することはできない。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 28コマ・1行 · タビドンベコルベ
…前辺の土俗伝へて言馬の病に用ひて効ある故生馬(イケマ)の名ありとタビドンベコルベ蟹の名なり渓澗微流に多産す水中へ味噌を投すれは石間より群し出て是を喰ふ捕得て炮りくろふに其味美夏…
『蝦夷島奇観』が水豹(アザラシ)に対応させる語形。体色や白い斑紋、皮の品等を説明する。輪形の記号を伴う歴史的な音写。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 29コマ・1行 · ト゚カリ
…かにといふ捕得て地上に置けはあとへ〳〵と却退する故に名ありと云々ト゚カリ水豹(アザラシ)なり大さ五六尺全体黒色豹紋白明なるを鼈甲班とて最上とす炭色の品多し一種全身に大水…
『蝦夷島奇観』の鳥の図に付く名称。家鴨ほどの大きさとし、名称の一部を鼻・善・鳥に分けて説明する。語の切れ目と各部分の訳は同書の分析による。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 30コマ・1行 · イト゚ヒリカネカツプ
…ゝことなし油は灯に用ひ肉の味鯨肉の甘美なり全物見されは図を出さすイト゚ヒリカネカツプ図奥夷地何処にもあり大さ如家鴨イトとは鼻の称ヒルカとは善といへる語なりネカツブは鳥の通称チコプカ…
『蝦夷島奇観』が平原に繁茂する草として図示する名称。根を刻んで蒸し、麹にして酒を造る利用を述べる。どの植物かは同定できていない。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 31コマ・1行 · チシユキナ
…れは木の生せさる島あり其所にて此鳥を捕て骨を焼て肉を煮て食ふと言チシユキナ写生此草平原曠野に繁茂す嘗試するに其味微甘鹹夷人根を採りて米位のことく剉き蒸熟して麹となし又別に…
『蝦夷島奇観』が山鼠と呼ぶ小動物の名。体に五本の筋があるとし、類書の華錦鼠などに比較する。縞を持つ齧歯類を述べる記録だが、引用された名称と近代分類の種名は同一ではない。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 32コマ・1行 · カシケクロクチ
…合して酒を造る其味本邦の濁酒にひとしく酔を発するも亦異ることなしカシケクロクチ山鼠也全体五道あり写生の如し事物紺珠曰く石虎に似り或曰清文鑑曰華錦鼠ともいへり浄玄寺よろずいろ〳…
アットゥㇱ(attus)。樹皮繊維から織る布、またはその衣服。『蝦夷島奇観』のこの箇所では、女性の服装の一つとして、刺し縫いした衣服や白木綿の服とともに挙げる。
沙流方言の両辞典に attus が載る。本文のアツシは衣服を指す歴史的表記。語の内部構造には辞典間で異なる説明がある。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 35コマ・2行 · アツシ
…遊楽とす女子は市中村里とも髪長くして美艶細腰なる者多し然も衣服はアツシ又は図の如くさしたるも有又は白木綿の服を着するもあり前垂布の紐を広くして帯の代ともせり松前筥館近…
『蝦夷島奇観』が「神髪」と説明する髪形の名称。子を授かる祈願に関わり、生長後も髪を切らず三つ編みに垂らすと記す。ムカワのホインカルらを具体例に挙げる。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 37コマ・14行 · カモイオドビ
…き者神に祈りて子を生すれは生長の後髪を切らず三組にして垂置ぬ名をカモイオドビと云ムカワ 地 名 夷ホインカル 夷 地 クンスイ 地 名 夷ペヾレケシ 夷 地 神髪なり此外処…
『蝦夷島奇観』の狐の図に付された名称。色丹島に産し毛色が淡黒いと説明する。後続の古典の黒狐の記事は比較材料であり、図の個体の産地を古代伊賀へ移す根拠にはならない。
本文に記録される語形と説明からの暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 39コマ・1行 · クンネチロノツプ
…任土部職因改本性謂土部連等之始祖也ムカワ 地 名 ホインカル肖像クンネチロノツプ(━━━━)図シコタン島に産する狐なり毛色淡黒なり続日本記曰和銅五年七月伊賀国国司阿直敬等所献黒…
ク(ku)、弓。『蝦夷島奇観』の弓矢図ではクウを弓、アイを矢に対応させる。田村辞典は手持ちの弓と仕掛け弓に同音の ku を記すが、所属形を区別している。
本文の図題は、田村辞典の沙流方言 ku(弓)と合う。本文のクウという表記からは母音の長さはわからない。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 9コマ・1行 · クウ
…目に苔をつむるなり船具図帆ワツカケカチ一曰ヲシヨノヱツフ走舟弓(クウ)矢(アイ)靭(イカヱツプ)図鏃は熊笹の本を以製す烏頭を搗爛し如図ぬりて魚獣の肉中に射込は忽然と…
アイ(ay)、矢。『蝦夷島奇観』では弓のクウ、矢筒のイカヱツプと並ぶ図題の語で、鏃や矢の使用に関する説明が続く。沙流方言の両辞典にも ay が載る。
沙流方言の両辞典の ay(矢)と本文の図題を照合したアイヌ語の道具名。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 9コマ・1行 · アイ
…むるなり船具図帆ワツカケカチ一曰ヲシヨノヱツフ走舟弓(クウ)矢(アイ)靭(イカヱツプ)図鏃は熊笹の本を以製す烏頭を搗爛し如図ぬりて魚獣の肉中に射込は忽然として斃る本…
ラッコ。アイヌ語では rakko。『蝦夷島奇観』では「猟虎」の読みを説明する箇所に現れ、得撫島での猟と毛皮の質が記される。
「猟虎」の読みを説明する語。アイヌ語 rakko は日本語にも借用されており、この用例の言語は判別しにくい。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 42コマ・5行 · ラツコ
…図を製ヱトロフ島クナシリキイタフ島の夷初夏より此島に渡りて猟虎 ラツコの音によりて 諸人文字を製 を獲る大さ六七尺毛厚くして縦横上下のわかちなく色紫黒席皮の上品とす猟…
女直(じょちょく)は女真の別称。女真人が暮らした中国東北部・アムール川流域・沿海州にわたる地域の呼称。『蝦夷島奇観』の本草書からの引用では、三佛齊国と並んで膃肭臍の産地として挙げる。この記述だけでは産地の範囲や具体的な採取地は分からない。
中国の本草書に見える漢語の呼称として分類。民族名の音写の起源までは確定していない。
参考文献
用例(1件)
- 北海道大学附属図書館 · 20コマ・7行 · 女直
…狂者為真也時珍曰按唐書云骨𧰹獣出遼西営州及結骨国一統志云膃肭臍出女直及三仏斉国獣似狐脚高如矢走如飛取其腎清油名膃肭臍観之則似狐之説非無也蓋似狐似鹿者其毛色爾似狗者其…