和談や処罰で用いる棒の名。『北海随筆』は互いに打ち合う稽古や制裁を記す。萱野辞典のストゥ(sutu、制裁棒)と用途が近いが、「すゝ」との語形の対応は未確定。
sutu(制裁棒)との対応は文脈からの候補。辞典には別に susu(ヤナギ)もあり、仮名の一致だけで樹木名や語源を決められない。
参考文献
用例(2件)
- 筑波大学附属図書館 · 40コマ・13行 · すゝ
…て用心向の為にはあらす夷中殺害の事なき故刃物用意なきと見へたり又すゝといふものあり長さ二尺計の棒に七寸計の内は鑓を廻りに打丈夫に作たるもの也すゝ打とて夷中多しなみの…
- 筑波大学附属図書館 · 40コマ・14行 · すゝ
…のあり長さ二尺計の棒に七寸計の内は鑓を廻りに打丈夫に作たるもの也すゝ打とて夷中多しなみの所作なり武士の兵法のことくに幼年より稽古せり打やうの手心修練打るゝものゝ請身…
不慮の死を遂げた者を弔う際の所作を記す見出し。メツカという語形の意味と「打」を含む行為の範囲は本文の記述だけでは確定していない。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 40コマ・20行 · メツカ打
…恨なきために互に打て鬱憤を散する也また罪あるものをも打といへり又メツカ打といふ事も有山海にて怪我をして横死せる者は一類あつまり泣弔ひて出刃を以て弔ふ夷の頭を一打つゝ互ひ…
獣道に設置し、獣が触れると毒矢が放たれる仕掛け弓の呼称。狩猟具の構造と仕掛ける場所を説明する語で、手持ちの弓とは用途が異なる。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 42コマ・6行 · タイマツフ
…き故いよ〳〵横行する事なり然るに一箭にて留る毒薬は奇妙の事なり又タイマツフといふもの有獣の通ふ道へ縄をはり柱を立てはしきにして毒箭を仕かけ縄へ少もさわるとはしきにて箭を発…
本文が腹の脂を食用にすると記す水生動物の名。体の利用を述べる一方で、現代の分類種を確定するだけの特徴は示していない。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(3件)
- 筑波大学附属図書館 · 25コマ・20行 · キナホウ
…る跡あり又鯨の臠の浪に浮みて家来る事あり是もカミキリの所為なり又キナホウといふ魚あり形は海鷂魚のことくなり腹内にあふらわたありき蝦夷人の珍味とする所也キナホウをとれハ腹…
- 筑波大学附属図書館 · 26コマ・2行 · キナホウ
…は海鷂魚のことくなり腹内にあふらわたありき蝦夷人の珍味とする所也キナホウをとれハ腹を割て油わたをとり其かわりにいなおいを入て海へ放すあつて死する事なし死セさるといふ事ハ…
- 筑波大学附属図書館 · 26コマ・5行 · キナホウ
…海へ放すあつて死する事なし死セさるといふ事ハ腹内にイナヲイのあるキナホウ度々取あてたる事ありイナヲイとは木をけつりかけて人の形のことくに作れりこれ蝦夷の船たまにて神のこ…
鯨を呑むほど大きいと本文が伝聞を記す海の生物の呼称。巨大生物についての当時の情報・想像を伝える記録で、実在の種との対応は確定していない。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(2件)
- 筑波大学附属図書館 · 25コマ・9行 · ヲキナ
…キイタツフにやかましき事あり去年は商船の行事やめられたり一東海にヲキナといふ魚あり其大さ何程といふ事を知らす鯨を呑といへり春夏は南へ出て秋よりは北海へかくる東蝦夷の漁…
- 筑波大学附属図書館 · 25コマ・13行 · ヲキナ
…事は稀なり海底雷のやうに唱て波浪あらくなり鯨鯢東西にわしる時は必ヲキナ来れりと知て猟毎とも早く逃帰るなり稀に浮みたる時見れハ大なる嶋三ッ四ッ出来たることくになるは背の…
本文が鯨を切って食べるとする生物の呼称。日本語の行為を表す語による名称と読めるが、現代の特定の生物への同定はできていない。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(3件)
- 筑波大学附属図書館 · 25コマ・16行 · カミキリ
…来たることくになるは背の鰭なるへし全体を見たる者ハなしといへり又カミキリといふ魚ありて鯨を切て喰ふ是は小魚にて近蝦夷にもあり鯨の死て流るを見かけれハ小船にて鯨へ乗移り切…
- 筑波大学附属図書館 · 25コマ・18行 · カミキリ
…もあり鯨の死て流るを見かけれハ小船にて鯨へ乗移り切取時是を見るにカミキリの切たる跡あり又鯨の臠の浪に浮みて家来る事あり是もカミキリの所為なり又キナホウといふ魚あり形は海…
- 筑波大学附属図書館 · 25コマ・20行 · カミキリ
…見るにカミキリの切たる跡あり又鯨の臠の浪に浮みて家来る事あり是もカミキリの所為なり又キナホウといふ魚あり形は海鷂魚のことくなり腹内にあふらわたありき蝦夷人の珍味とする所…
ペッ(pet)、川。『北海随筆』は大河と訳してナイ(小川)と対にする。田村辞典の沙流方言では地域を代表する川を pet、支流や沢を nay といい、大小だけで呼び分けるわけではない。
本文が「夷言」と明記する河川の語を、沙流方言の pet と照合した分類。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 21コマ・12行 · ベツ
…ヘツを第一とするよしなり此大河あるを以て国の大なる事知るにたれりベツとは大河の事ナイとハ小川の夷言なり一キイタツフは東海商船通路の限りなり猟虎も此所にて交易するなり…
ナイ(nay)、沢やその流れ。『北海随筆』はベツ(大河)に対して小川と説明する。田村辞典の沙流方言では川の支流や沢を指し、大きな支流でも nay と呼ぶ場合がある。
本文の「小川の夷言」という説明は、沙流方言辞典の nay(沢)と合う。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 21コマ・12行 · ナイ
…よしなり此大河あるを以て国の大なる事知るにたれりベツとは大河の事ナイとハ小川の夷言なり一キイタツフは東海商船通路の限りなり猟虎も此所にて交易するなり此辺嶋多し所謂蝦…
本文の表記 おとな · オトナ
本文が日本の名主にたとえて説明する村の首長の呼称。日本語のオトナ・乙名としても用いられ、アイヌ語の音写か日本語側の役職名かは用例によって異なる。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(2件)
- 筑波大学附属図書館 · 12コマ・14行 · おとな
…の外は残らす家臣の知行に割渡て天地も余地なし蝦夷人一村の酋長ありおとなといへり松前の令を請て漁猟を事とし海物を以て年貢とす商人は近蝦夷の其村々を請合松前にて運上を納め…
- 筑波大学附属図書館 · 33コマ・16行 · オトナ
…りしに娘二人あり琴を弾して歌曲をなして饗応したり一蝦夷村の首長をオトナといふ則本邦の名主也松前より令を此者に伝へて威権あり蝦夷人とも慎て此下知に随ふ春毎に産物を乗セて…
本文の表記 ジツトク · シツトク
北方交易で渡る衣服を本文が呼ぶ名。日本語の十徳という衣服名を当てて説明する用法であり、舶来衣服の構造が日本の十徳と完全に同じとは限らない。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(2件)
- 筑波大学附属図書館 · 13コマ・10行 · ジツトク
…を蝦夷共ヤスにて突又毒箭にて射るなり 一蝦夷錦 衣服に仕立てるをジツトクと云巻物をキンランと云多くは古着也 一あさらし皮一虫巣五色あり青玉多く渡る此三品は西海ソウヤの交…
- 筑波大学附属図書館 · 34コマ・3行 · シツトク
…時はアツシ鹿皮等は着セす本邦の女衣裳の古きを着し帯をもするなり又シツトクを着するもあり目見済て領主より酒をたまひ又米を賜ハる木屋へ帰りて祝義ありたまものゝ酒を中座に居一…
金襴(きんらん)に関係する表記。本文では蝦夷錦の巻物を指し、樺太・大陸との交易で入る織物の記述に現れる。地名や人名ではなく交易品の呼称。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 13コマ・10行 · キンラン
…又毒箭にて射るなり 一蝦夷錦 衣服に仕立てるをジツトクと云巻物をキンランと云多くは古着也 一あさらし皮一虫巣五色あり青玉多く渡る此三品は西海ソウヤの交易なり此外珍らしき…
鷲の羽の区分を説明する割書に現れる呼称。交易では羽の部位や状態による区別が重要だが、この語の細かい意味や現代形は本文だけから確定できない。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 13コマ・4行 · カスケウス
…り夫故知行取は多くあれとも斛積りの知行はなし蝦夷産物鷹鷲羽 真羽カスケウス ヒヤウ八クマ ゑふりこ鶴熊胆熊の皮鯡昆布 うかにて取所の石付と赤とを上品 とししのりを下品とす…
鷲羽の呼び分けを記す割書中の名称。カスケウスとともに羽の区分に関わると読める。生物名・部位名・品等名のどれに当たるかは不明。
本文における表現の言語の暫定分類。語源・現代形は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 13コマ・4行 · ヒヤウ
…は多くあれとも斛積りの知行はなし蝦夷産物鷹鷲羽 真羽カスケウス ヒヤウ八クマ ゑふりこ鶴熊胆熊の皮鯡昆布 うかにて取所の石付と赤とを上品 とししのりを下品とす 椎茸鮭…
本文の表記 京
多賀城碑の「京を去事千五百里」の京。奈良の平城京を指す。
本文の呼称からの暫定分類。語源と現代の地名との対応は未確認。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 50コマ・1行 · 京
…の里数を以相考ふれは此一ノ関は古の蝦夷国界にて関所有けるなるへし京を去事千五百里常陸の国境を去事四百十二里下野国境を去事二百七十四里是等里数漸合へり上代の海道しば…
巳(み)の刻。十二支による昼の時刻で、昼の四ツともいう。現代の等間隔の対応表では午前9〜11時、中心は10時。本文では潮の異変が起こり始める時刻を記す。 江戸時代の不定時法では季節により一刻の長さが変わるため、実際の出来事をこの時計時刻に確定することはできない。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 6コマ・1行 · 巳の刻
…されて南部の沖へ漂流する事度々なり又夏の間は潮おこりといふ事あり巳の刻よりおこりて未の刻計りに止む其おこりやうは海底より潮湧出て四方より大浪もみ合する故遠く是をのそめ…
未(ひつじ)の刻。十二支による昼の時刻で、昼の八ツともいう。現代の等間隔の対応表では午後1〜3時、中心は2時。本文では潮の異変が止む時刻と、別の記事で山が震動し始めた時刻に用いる。 江戸時代の不定時法では季節により一刻の長さが変わるため、実際の出来事をこの時計時刻に確定することはできない。
参考文献
用例(2件)
- 筑波大学附属図書館 · 6コマ・1行 · 未の刻
…流する事度々なり又夏の間は潮おこりといふ事あり巳の刻よりおこりて未の刻計りに止む其おこりやうは海底より潮湧出て四方より大浪もみ合する故遠く是をのそめは白糸をちらしたる…
- 筑波大学附属図書館 · 28コマ・14行 · 未の刻
…の積雨の日数おこたりたるいとなみを男女打混して浜辺にむれ居けるに未の刻計りに俄に山の方震動せしまゝ雷霆やすると見返りけれとも雲一点もなき晴天なれはふしきの事に思ひて見…
亥(い)の刻。十二支による夜の時刻で、夜の四ツともいう。現代の等間隔の対応表では午後9〜11時、中心は10時。帰路の船が霧で方角を失った後、西風で霧が晴れ、月の光が見えた頃を記す。 江戸時代の不定時法では季節により一刻の長さが変わるため、実際の出来事をこの時計時刻に確定することはできない。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 6コマ・16行 · 亥の刻
…たゝよひけるまゝにやかて日も暮山はくもりて猶更行方をわかたさる内亥の刻はかりに西風吹払て月の光見へけるをたよりにして丑刻計りに津軽の藤島といふ所へ着たる事あり此藤島は…
丑(うし)の刻。十二支による夜の時刻で、暁の八ツともいう。現代の等間隔の対応表では午前1〜3時、中心は2時。本文では霧の中を航行した後、津軽の藤島へ着いた頃を記す。 江戸時代の不定時法では季節により一刻の長さが変わるため、実際の出来事をこの時計時刻に確定することはできない。
参考文献
用例(1件)
- 筑波大学附属図書館 · 6コマ・18行 · 丑刻
…わかたさる内亥の刻はかりに西風吹払て月の光見へけるをたよりにして丑刻計りに津軽の藤島といふ所へ着たる事あり此藤島は三馬屋#2の辺にて山の形海の様も覚へたる所なから雨…